GIAHS Study tour

今こそ、何を
SDGsすべきなのか?

観て、聴いて、ふれあい、絆を結ぶ体験ツアー

今こそ、何をSDGsすべきなのか、を探求する旅です。
大昔から大変な努力を払って“SDGs”してこられた貴重な遺産を、その遺産を守ってきた人々を、この目で観て、聴いて、触れて、心を通わせ合い、絆を結ぶ。そして、もちろんおいしくいただく。

そんなスタディーツアーで、 あなたのSDGsをアップデートしていきましょう!

世界農業遺産を巡るシリーズツアー 06
宮城県大崎耕土  Study tour 06 2023.11.24ー26

ふゆみずたんぼにササニシキを求めて

人の暮らし & 渡り鳥の暮らしを支えてきた沼と田んぼダム
 秋の夕暮れ、雁がねぐらに帰る様は、枕草子でも歌われるほど、日本全国で当たり前に見受けられた風景でした。しかし、雁が渡れる沼は、近代化に伴う宅地開発により、そのほとんどが失われてしまいました。ここ宮城県では、4つの沼と周辺の田んぼがラムサール条約に登録され、国際的にも貴重で珍しい場所として保護されています。中でも、大崎市の蕪栗沼と化女沼(大崎市)は伝統的な農業システムとして世界農業遺産登録も受けています。
 もともと水害の多かった日本では、田んぼ自体がダムの役目を負う、つまりあぜに囲まれた田が大量の雨水を貯め、その後ゆっくりと川に流すことができます。耕作された圃場は、土の粒子が集まって団粒構造となっているので、その隙間に雨水を貯める、つまりダムになり得るのです。ここにきて、昨今の気象激甚化による河川災害の大規模化に対する対策として、全国各地で見直されつつあるのが、この田んぼダムシステムの取り組みです。農林水産省の資料によると、日本全国の水田に貯留できる水の量は約50億㎥、東京ドームの約4,000杯分にもなるそうです。

ダムとしてもポテンシャルの高い田んぼに、冬にも水を張る農法
 宮城県大崎市では、「ふゆみずたんぼ」は、約300年前から伝統的農法として記録に残っています。ふゆみずたんぼ(世界農業遺産認定の当地ではひらがな書き)には、菌類が繁茂し、嫌気発酵が進みますし、イトミミズなども増えます。小さな生ものが増えると、それを求めて飛来する水鳥達の生息地ともなります。栄養豊富な田んぼには化学肥料は必要ありません。また、「ふゆみずたんぼ」に産卵をする蛙やくもが、稲などの害虫が発生する頃には餌として害虫を食べてくれるので、農薬を使わなくても害虫駆除の役目を果たしてくれるます。遥か北の国から渡ってくる雁などに生息地を与える取り組みはぐるり回って、人の社会にも貢献するわけですね。

生物多様性は、農薬、化学肥料を必要としない環境を創り出す
 2023年を振り替えると、「椎葉村の焼き畑農法」「みなみ田辺の山の斜面を利用した梅・果樹栽培」「琵琶湖システムな魚のゆりかご水田」「能登の白米千枚田」、これらすべての伝統的農法は、現代の農業の持つマイナス要因をプラス要因に変える力を持っていました。2024年は、それぞれの地域に順応し、悠久の時間に育まれて進化してきた「品種」を守ることにも注力し、これら伝統的農法の価値を世に知らしめていきたいと思います。 ちなみに、大崎耕土の「ふゆみずたんぼ」特産品の米の銘柄はササニシキ(発祥の地が宮城県です)とひとめぼれです。蕪栗沼周辺で農場を経営する蕪栗グリーンファームの斎藤さん曰く、「ササニシキは交配しやすいんですよ。すぐに遺伝子が変異するので、種取りが難しい。気をつけないと、ササニシキではなくなる!」
 変化を受け入れることは生き残り(収穫量の大きな子孫)を作る能力が高いと言うことかもしれませんが、ササニシキの特性を残したい、守りたいということであれば、栽培面積を増やす、そのために需要を高める活動を実行する必要があります。伝統的な食べものの作り方を地域が再興していくほんもののアグリエコロジー実践の奨励とセットでなければなりません。ササニシキの特性は、①酒米、寿司米に向いている、②食物アレルギーの抗原度が低い、そして今風で言えば、③米食パン作りに向いているでんぷん組成を持っていることでしょう。
 世界農業遺産を巡り、地域創生の試みがオーガニックから外れたところで動いていることに驚きを隠せません。実は、オーガニック農法自体が、農薬と化学肥料、そして無意味な化学薬品や放射線を使った育種を必要としない「堅実な農業システム」であることを主張していきたいと思います。

What’s GIAHS ?

世界農業遺産(GIAHS)とは?

Globally Important Agricultural Heritage Systems

世界農業遺産(GIAHS)とは、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに密接に関わって育まれた文化、ランドスケープ及びシースケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、世界的に重要な伝統的農林水産業を営む地域(農林水産業システム)であり、国際連合食糧農業機関(FAO)により認定されます。世界中に24か国76地域、日本には現時点で15地域が登録されています。